重度障害者在宅ワーカー10人のインタビュー集「ブレイブ・ワーカーズ」の発行人、上村数洋さんに聞く

「ブレイブ・ワーカーズ」発行、上村数洋さん
ブレイブ・ワーカーズ|バーチャルメディア工房ぎふ/編|上村数洋/発行
  • ブレイブ・ワーカーズ
  • バーチャルメディア工房ぎふ/編
  • 上村数洋/発行
  • 四六判 160ページ
  • 上製本
  • オフセット印刷
  • 制作部数:1,000部

IT技術の進歩によって、通勤することが難しい重度の障害者も、パソコンを利用することで社会参加を試みようとする動きが活発になっています。私たちバーチャルメディア工房ぎふでは、働く意欲や能力があっても、働くための環境が確保できないために仕事に就けなかった障害者のために、「在宅就労」で働けるような様々な取り組みを行ってきました。

具体的には、就業を希望する障害者を対象とする仕事の斡旋です。登録ワーカー試験に合格し、一定以上のパソコンスキルを持った方々に対して、官公庁や協力企業から受注した仕事を、分業で担当してもらいます。私たちは厚生労働省が認定する在宅就業団体という資格を持っているため、発注者は身体障害者雇用促進法に基づく特別調整金などの助成金を受け取ることができるというメリットもあるのです。

工房設立から十一年。まったくのゼロからスタートした組織も、現在では登録ワーカー十五名の規模にまで成長しました。一人ひとりへの仕事量の提供はまだまだ十分とは言い難いのも事実ですが、彼らが「立派に仕事をして、社会参加できる」ことを証明できただけでも、非常に有意義なことだと考えています。

個性溢れるバーチャルメディア工房ぎふのワーカーたち

今回、私たちが発行した「ブレイブ・ワーカーズ」という本は、登録ワーカーや卒業生、スタッフなど十名の障害者たちに、仕事や夢、スポーツや音楽活動、恋愛に至るまで、日頃考えていることを自由に語ってもらったインタビュー集です。

手足は不自由だけど、韓流スターのようなルックスで女の子たちから大人気の青年。三つ子たちに囲まれて幸せな毎日を暮らす車椅子のお父さん。自立生活と企業への就職という二つの夢を実現させた、脳性麻痺のエンジニア…等々。バーチャルメディア工房ぎふに関わる障害者たちは、実に個性派揃いです。

重度の障害を抱えながらも、こんなに明るく前向きに生きて働いている彼らの存在を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。彼らの意気込みを、感じてもらいたい。そんな願いを込めて、本書を出版することになりました。タイトルの「ブレイブ・ワーカーズ」は、「勇気ある仕事人たち」という意味です。

私たちの存在を知ってもらうことは、すなわちバーチャルメディア工房ぎふという組織の理解者を周りに増やしていくことでもあります。そしてそれが結果的に、仕事量を確保することにつながるのではないでしょうか。昨年末からの世界的不況によって工房事業も非常に厳しい状況にはありますが、そんな時こそ打って出なくてはなりません。

自分たちの組織の特徴は、参加メンバー一人ひとりの中にこそあるのです。本書を読むことで、社会全般からの障害者へのイメージが変わってくれることも願っています。

個性溢れるバーチャルメディア工房ぎふのワーカーたち
バーチャルメディア工房ぎふのワーカーたち

原稿は、すべてインタビューによって書き起こしてもらった

制作部数は1,000部。「最新の障害者の在宅就労事例集」としても、国内関係者に広く読んでもらえる格好の資料になったのではないでしょうか。そのため積極的に講演会等のイベントを主催して、本書のPR活動に努めていくつもりです。また、テレビや新聞などのマスメディアを通じてパブリシティ記事を掲載してもらい、希望者に販売するルートも検討中です。

原稿は、すべてプロのライターに書き起こしてもらいました。ワーカーさんにインタビューしていただき、彼らのナマの声を文章にする「聞き書き」というスタイルです。

「まるで本人たちの話を直接聞いているみたい」「とても読みやすくて、あっという間に読み終えてしまいました」と、読者からはとても好評です。本人たちも、自分で原稿を書いたとしたら、とてもこんな形にはまとまらなかったと驚いていました。

本書の主たる出版目的は、組織の啓蒙活動です。カタログを配布するよりも、書籍の形でメンバーたちの声を広めることが最強の営業ツールになると考えています。本書によって、バーチャルメディア工房ぎふという組織への理解が深まり、仕事の依頼も増えることを希望しています(笑)。