郷土の遺跡研究の先達であった父の考古論考集を制作「相川龍雄・上毛考古学論考集」の編者、相川達也さんに聞く

「相川龍雄・上毛考古学論考集」を編集/発行された、相川達也さん
相川龍雄・上毛考古学論考集|相川達也/編
  • 相川龍雄・上毛考古学論考集
  • 相川達也/編
  • B5判 748ページ
  • 上製本
  • オフセット印刷
  • 制作部数:300部

相川達也(あいかわ たつや)プロフィール

  1. 伊勢崎町立北小学校卒/群馬県立太田中学卒/早稲田大学政治経済学部卒
  2. 群馬県史蹟名勝天然記念物調査員/上毛新聞社 嘱託

私の父、龍雄は早稲田大学在学中から、群馬県内の遺跡調査を手がけ、郷里に戻ってからは県の史蹟調査員として発掘に従事し、多数の報告書を書いています。といっても、私は父が亡くなった時にはまだ10歳の子供でした。父と生活をともにした思い出はありますが、父の仕事に関してはまったく理解していませんでした。家の中に埴輪がたくさんあったので、それらは趣味で集めていたと思っていたくらいです。

父が史跡調査に関する論文を書いていたことは、大人になって母から聞いていましたが、専門誌に発表していたことを知ったのは、ずっと後になります。私もいっぱしの父親になり、自分の娘が大学の史学科に進むと、祖父の論文を見つけるたびに私に見せてくれるようになったのです。

しかし戦後の混乱で、我が家に他人が入り、父の書いた雑誌類、自ら蒐集した遺物、拓本類などは母の手には残りませんでした。父の文献を集める中で、40才で戦死するまでの短い期間によくも、これだけのことを調査し、報告を書いたものだと感服しました。父の死後、苦労して2人の子供を育ててくれた母のために、いつか父の仕事をまとめようと心に決めていましたが、私の仕事(医者)が多忙のため延び延びにしてしまい、母も失うはめになりました。

母の死がきっかけになり、遺稿集としてまとめることを改めて決意したわけです。資料を集めるのに、一年以上はかかりましたね。まずは父の全論文のリストを作るために、私の三女に群馬県立図書館の調査相談室に行ってもらいました。調査相談員の方が非常に親切にしてくれまして、おかげでスムーズにリストが完成、それぞれのコピーを取り寄せることもできました。しかし掲載している雑誌の全体像を把握するのも大切です。そのため古書店に依頼して「上毛及上毛人」などは時間と費用をかけて徹底的に集めました。水戸近辺の古書店の間では、相川がこの雑誌を探しまわっていると有名になっていたようですよ(笑)

父の名は、いまでも研究者たちに記憶されていた!

この本を作る上でたくさんの方々と巡り会うことができました。とくに嬉しかったのは、明治大学考古学研究室の石川日出夫教授や大塚初重名誉教授たちとの出会いです。本書に掲載した一冊の報告書が、当時の帝室博物館にいらした故後藤守一・明治大学名誉教授と父の共著になっていたため、著作権についての相談を同じ大学の考古学研究室である石川教授に手紙を出してお伺いしたのです。

遺稿集としてまとめるため、一年以上費やして集められた資料の画像

まったく面識もない、ずうずうしい一方的なお願いでしたが、すぐに、教授から「もしかして封書に書かれたお名前から、相川龍雄さんのご子息かな?と思いましたが、拝読してその通りであり、驚いております」とのいうメールを頂戴したのです。これには、本当に感動しましたね。一番記憶していただきたい方々に、父の名はしっかりと記憶されていたわけですから。

資料の中から、父の仕事に対する情熱と著名遺跡の調査の先駆けであることを知る

当時の仮名遣い、漢字をそのまま入力して印刷した

本書は、あえて父が雑誌に発表した当時の仮名遣い、漢字をそのまま新たに入力し直して印刷しました。実は、これが意外に難しかったわけです。当初ある出版社に相談したのですが、「制作には3年くらいかかる」「資料をご自分で持っていれば、それでいいのでは?」とも言われたりしました。いま思えば、対応に苦慮した結果の発言なのかもしれませんね(笑)

ところがブックメイドに相談してみると、まったく問題ないと自信満々に受けていただけたのです。しかも文字入力から校閲まで含めてトータルでお願いでき、3年どころか、原稿をお渡ししてからたった4ヶ月あまりで、本が完成してしまったわけですから。本造りに関して私は全くの素人でしたので、編集作業を手伝ってもらえたのもとても助かりました。とくに表紙デザインは、父の業績を見事に表現してくれた素晴らしい出来映えで、本当に気に入っています。

群馬県の郷土史の教科書としてぜひ読んでいただきたい

この本は、群馬県の郷土史の教科書として興味ある方にぜひ読んでいただきたいですね。古墳が多いことでは東国一といわれる群馬県内の古墳を見に行くときの基本的なテキストになるはずですし、そのため、群馬県内の図書館や学校、大学の考古学研究室などに寄贈していこうと考えています。