蘭学家老・鷹見泉石の功績を漫画化した「泉石と雪の殿様」の著者、市原敬子さんに聞く

「泉石と雪の殿様 ─鷹見泉石ガイドブック」著者、市原敬子さん
泉石と雪の殿様 ─鷹見泉石ガイドブック|市原敬子/著|鷹見本雄/監修
  • 泉石と雪の殿様─鷹見泉石ガイドブック─
  • 市原敬子/著
  • 鷹見本雄/監修
  • A5判 80ページ
  • 並製本
  • オフセット印刷
  • 制作部数:1200部
  • ISBN:978-4-904241-46-2

市原敬子(いちはら けいこ)プロフィール

  1. 1981年東京生まれ。聖心女子大学卒業。
  2. 代表作として、ドラマCD『獏狩り(全5巻)』(TMA企画)がある。BS放送にてテレビ化もされ、2010年にはマックガーデンから単行本が出版された。漫画制作に限らず、シナリオ、音楽、小説の分野でも活躍するマルチアーチストである。

私の母が現在の鷹見家当主と友だちで、その縁から今回の仕事を発注してくださいました。歴史はとても好きなのですが、鷹見泉石の名前はまったく知らなかったですね。

鷹見さんから事前にレクチャーしてもらい、(泉石の故郷である)古河にも何回か出かけて町の雰囲気に触れ、大量の資料を読み込んでようやく私の中で主人公たちが自由に動き出せる雰囲気になりました。

当初は、鷹見さんが書いた解説文に挿絵を付けるだけの企画だったのですよ。仕事としてはラクなのだけど、せっかくマンガ家である私が関わるなら、もっと思い切った内容にしたい。はじめの会議でそんなことをお話しさせていただくと、思う存分自由に描いてほしいと言われました。

そんなわけで、歴史マニアからは「ちょっとやり過ぎ?」と苦い顔をされそうなほど、好き勝手にマンガ化しちゃいました。これほど自由に描けたのも、鷹見当主の全面的な後押しがあったから。内容チェックもふくめてサポートしていただけたので、安心して作画活動に専念できました。

鷹見泉石ガイドブックとしての漫画に挑戦

チャラ系の利位と、クールな泉石。イケメン対決にもご注目

鷹見泉石の上司に当たる古河藩主・土井どい利位としつらは、江戸幕府の老中首座にまで出世した名殿様。けれども彼の功績の多くは参謀役であった泉石のサポートのおかげだと言われています。いつの間にか世間では、「土井の鷹見か、鷹見の土井か」と噂されていたほど。

私はこの二人の関係を、チャラ系の殿様利位としつら VS クールなイケメン泉石という構図に落とし込んでみました。

利位としつらの扱いについては論議のあるところだと思いますが(笑)、全体的な雰囲気としては間違っていないと思うのですね。

なにより大切なのは、利厚としあつ利位としつらの二代にわたって献身的に仕え、海防掛を担当した藩主のために必死で外国語を学び、最新の海外情報を収集しつづけた泉石の活動内容。

あまりにマニアックな人物なので、一般には理解されなかったのだと思います。そのため、漫画ならではのタッチで多少誇張してユーモラスに描いてみました。

チャラ系の利位と、クールな泉石

もっとたくさんの人に、泉石の功績を知ってほしい

鷹見泉石の最大の功績といえばやはり、40年間にわたる海外情報収集活動の結果を集約させた、自主開国意見書「愚意摘要ぐいてきよう」の執筆でしょう。

すでに古河に隠居の身であったにもかかわらず、ペリーが来航することを事前に知った泉石は、やむにやまれずこの書を書き上げました。

泉石と極めて親しかった幕末の外交担当・川路かわじ聖謨としあきらを通して、老中首座・阿部正弘にも間違いなくその内容は伝わったと言われています。勝海舟たち幕末の志士の開国論にも、大きな影響を与えたスゴイ意見書なのですよ。

大河ドラマで有名になった軍師勘兵衛もそうですが、参謀役の人たちの活動は歴史の表舞台になかなか出てきません。でもよく調べてみると、鷹見泉石は日本が近代化を果たす上での影の功労者ともいえる存在なのですよ。

泉石がいたから、明治維新につながったといっても決して過言ではありません。そんな地味な人物にスポットを当たるために、私の漫画が少しでもお役に立てるとうれしいですね。

コミカルなタッチの4コマ漫画も多数収

explain

漫画はストーリー形式だけでなく、コミカルなタッチの4コマ漫画も多数収録。鷹見泉石のさまざまな活動について、情報が満載だ。内容を補佐するために、歴史コラムや鷹見当主による解説文も掲載されている。