「福祉施設の売上ノルマ」は不愉快なのか?

Kプランニング

水戸市で開催された工賃向上研修会のアンケート結果がまとまりました。今回もまた大反響だったようで、担当者からはわざわざ電話でその結果を伝えてくれました。参加者35名中、アンケートを書いてくれたのは32名。そのうち31名が今回の講義を「大変役に立った」「役に立った」と書いてくださったわけですから、とても有難い限りです。

しかしまあ、いつも大反響の意見ばかりでは聞かされる方も、いささか食傷気味かもしれません。今回は志向を変え、たった1名から来た不満意見を採り上げてみたいと思います。そのアンケートには、次のように書かれていました。
・「売るチカラ」の話が、若い職員に無茶なノルマを課してサビ残してプライベートな時間や関係を使って売らせるという、ブラック企業のしばきあげの方法で、聞いていて不快でした。真似すべきではない。事例の中には興味深い取り組みもあったので、残念でした。

基本的には私としては、こうした反論は大歓迎の立場です。できれば質疑応答の時間に、直接訴えてほしかったぐらいです。かなり挑戦的な書き方なので、私なりに回答をさせていただきましょう。

「若い職員に無茶なノルマを課す」というのは、①施設の立ち上げ時に、豆腐定期会員3000名ノルマを課したホームラン ②パンの出張販売で「売り切るまで帰ってくるな」を方針として掲げるエコーンファミリー ③全部署の売り上げ目標と達成状況をグラフにして廊下に掲示する社会就労センターかもな、等々の事例を指すのだと思います。

でも申し訳ないけど、これがどうして「ブラック企業のしばきあげの方法」なのか、私には理解できません。少なくとも事業活動を行っている一般企業では、当たり前の営業活動です。毎月一定の給料をもらうためには、商品を売って利益を上げないといけない。ブラックだろうが何だろうが、「できることはなんでもやる」。そんな意識をもつことから、まずはスタートします。

「私たちの活動目的は福祉なのだから、そんな企業と同じ方法は採りたくない」──それも1つの考え方だとは思います。だとしたら、あなたはどうやって利用者たちの「工賃向上」をめざすのか? その具体的な方法を提案していただきたい。実際、現場の支援力をあげることによって職場環境と利用者たちの働く意欲を向上させ、結果的に工賃向上につなげた事例(助けるチカラ)も紹介しましたよね。でもそれらの施設だって、営業活動は必死に行っているはずですよ。

「職員にノルマを課すのは福祉施設のあり方として間違っている」──こんな発言を平然とする輩がいるから、障がい者就労継続B型支援事業所の全国平均工賃は約15,000円という数値に留まっているのです。そのくせ、職員たちには毎月、しっかりと定額の給料と賞与が保障されている。どうみても、おかしくないですか? 今は亡き、ヤマト運輸社長の小倉昌男氏の言葉を引用するまでもなく、この数値では「あなたたちは、障がい者を搾取している」と言われても仕方ないでしょう。

この言い方がひどいと思うならば、結果をもって反論するしかないと思うのです。でも多くの施設職員たちは、自分たちのこれまでの考え方が甘かったことに気づいています。本気で何とかしたいと思っています。だからこそ、私の講義(全国の好事例紹介)にたくさんの反響があるのでしょう。

福祉論を振りかざすのは、もうやめにしませんか? そうではなくて、まずは行動する。やれることからなんでも取りかかる。そんな人たちが、もっと福祉の現場にも広まることを期待したいと思います。