「マリンディ日記」を制作した

Kプランニング

30年も前に50過ぎの夫婦が日本から脱出し、アフリカのマリンディに10ヵ月あまり移住したときの記録をまとめた「マリンディ日記」の制作を担当し、はや3ヶ月。元原稿を渡されたときの戸惑いは、今でも忘れることが出来ません。なんと言っても、A4の用紙にワープロ文字でビッシリ埋め尽くされた原稿が、千枚あまり。これを文字で打ち直す作業だけでも相当な労力だというのに、そのまま本のカタチに流し込んだとしたら、ざっと見積もっても1000ページを超えてしまいます。ドストエフスキーの小説じゃあるまいし、いくら内容がユニークだと言っても誰がそんなもん読むのだ? 

そのため本書の制作を請け負ったときに、どこまで内容をカットできるかが大きなテーマとなりました。さらに原稿中には、人物名や地名や現地のホテル名、店舗名等など、英文表記が頻出します。長い間日本語を使わない生活をしていたので、作者も原稿を書くときに英語の方が簡単に書けるようになっているからです。だから、この英語表記をカタカナ表記に直してほしい──これも強く要望されました。でも書き殴りの日記だからね、英語表記のスペルもけっこうミスがあるわけですよ。それを1つひとつ読み解いて、調べて、カタカナに変換する作業が必要です。

加えて、原稿自体がとても読みにくい。ただでさえ長い日記なのだから、読みやすい文章に直してあげないと、とても読者は最後までたどり着くことが出来ません。ということで、原稿中の誤字脱字はもちろんのこと、分かりにくい表現の修正。長すぎる文章を読みやすくカットするなどのリライト作業も行っていきました。これらの作業のために、カットして600ページにまとめた本文を読み直すこと十数回。もしかしたら作者以上に、内容について熟知してしまったかもしれません(笑)。すくなくともケニアの国情についての知識は、すっかり持ってしまいました。

商業出版の編集者ならともかく、自費出版本の制作においてここまで徹底的に内容を吟味する編集者というのは珍しいかもしれません。でもまあ、本当に中身が面白い本であるならば、自費出版でもこれだけ価値ある本が作れるということを証明できる作業は、とてもやり甲斐があります。なによりも作者が一番喜んでくれるしね。「マリンディ日記」は、いよいよ今月末に完成します。本当に大変だったけど、私が編集担当した本の中でもとても思い入れのある作品に仕上がりました。Kプランニング制作の代表的な自費出版といえると自負しています。

マリンディ日記