「はるはる日記」の制作をスタート

Kプランニング

私は以前、『障害者の日常術』(晶文社、1991年)という本を出したことがあります。目が見えなくても、手や足が動かなくても、仕事もするし、恋愛もする。車いすでスポーツもするし、子育ても楽しむ。さまざまなハンディとともに生きる人々が、日々の暮らしと意見を自由に語る! 「年齢も、性別も、暮らし方も違う29人が、苦心と工夫と発見に満ちた毎日を、それぞれの言葉で語る、かつてないインタビュー集」というわけです。もう30年も昔の著作なのですが、内容はいまだに古びていない会心の作だと自負しています。

『障害者の日常術』は主に、身体障がい者の方の話を聞き取ったものでした。これをさらに発展させて、今度は知的障がいのある人たちの日常生活を書籍化できないか?と、十数年前から構想していました。というのも私の妻が現役の知的障がい者施設の管理者であり、若い頃からずっと彼女から施設利用者たちのユニークなエビソードを聞いてきたからです。

たとえば入所施設利用者のAくんが、施設を抜け出してラーメン屋に入り込み、カウンターに座ってしまった。しかし彼は重度の障がいがあり、言葉を発することすらもできません。それなのになぜか店主とあうんの呼吸が通じていまい(笑)、目の前には大好物のラーメンが出てきます。しかもそのラーメン屋は、替え玉自由の博多ラーメン。食べ終えても座っている彼に「替え玉ですか?」「……(ウンと、うなづく)」だけで、何度も替え玉が出されたというのです(笑)。

こういうエピソードが、知的障がい者の施設には山のように眠っています。なんとも愛すべきキャラクターたちです。もちろん彼らと一緒に生活したり、仕事をするためには大変な苦労がともなうのは承知しています。でも一人ひとりの人間としての魅力を知ってもらうことは、知的障がい者と呼ばれる人たちを認知してもらうために必要なのではないでしょうか?

 残念ながら、日本にはまだまだ障がい者への差別や偏見は残っています。そしてそれをなくすためには、正論を振りかざすだけでは不可能です。唯一、「人としての魅力」こそが、人々の心を変えることができるのです。

とそんな考えから、『はるはる日記』の制作に取りかかっています。知的障がい者の場合、彼らの魅力を言葉のカタチでまとめることは難しい。ですから今回は、マンガというカタチを採用しました。彼らのユニークなエピソードを可愛いタッチの50回のシリーズ漫画にして、それぞれミニエッセイ(解説)を加えます。生活、仕事、支援、障がい…さまざまなテーマを、ここでは取りあげて見ました。販売方法等はまだ未定ですが、これまでになかった画期的な書籍なので、既存の出版ルートに載せるのではない新しい販売スタイルを模索中です。くわしくはまた、当ブログの他にも、FacebookやInstagram等のSNSでもお知らせいたしますね。

はるはる日記の画像